私は知らなかった。
この笑いあう二人を見て、
嫉妬の炎を燃やしていた人がいたことに…
───────
──────────
「やったね、聖也くん!」
「夏希ちゃんのおかげだよ」
私のピアノと聖也くんの指揮のタイミングがバッチリ合った。
たった3日だよ?
聖也くんは運動神経が良いからだね。
「合唱コン、頑張ろうな」
「うん。目指すは優勝、だね!」
私と聖也くんは帰宅するため、少し暗くなった校舎を歩いていた。
二人の足音だけ…
幸信もいるのに…
「暗い学校って雰囲気あるなぁ……幽霊でもいたりして!」
冗談ぽく言った何気ない聖也くんの一言に、ピクッと反応して立ち止まる。胸を痛めている自分がいた。
幽霊…。
幸信は幽霊…
でも、幸信は幸信。
幽霊なんて、ましてやお化けなんて言葉で幸信を言い表してほしくない。
確かに、死んでる。
確かに、触れられない。
…でも、人間だよ。



