そんなことを考えているうちに幸信は進めていた足をピタッと止めた。


……屋上?



「ほら、あそこ……」



幸信の指と腕を目でたどるとそこには新井くんが煙草をくわえて座っていた。


やっぱり、少し怖いかも。



「夏希、頑張れよ?お前ならあいつ救えんじゃね?」



救える……

私が新井くんを?


そんな風に考えてなかった。


そして、幸信は私に一度笑顔を見せてくれたあとに消えた。


自由に姿を消したり、現したり…そういうところが『死人』『幽霊』なんだなと実感させる。



私、変わってる。

きっと、幸信と出会ってから。



私は新井くんに背を向けて、大きく深呼吸をした。


そして、クルッと新井くんのいる方向に体を向けた。