眼下のドブ川は建物の隙間を縫うように奇妙に曲がりくねり、かの場所は隣のビルからは死角になり見えない。

夜風に吹かれながらビールを傾けるイクエの脳裏に、ユウイチのいまわの際の言葉が蘇る。

『狂気と正気には境目なんてない…』

イクエにはユウイチが最後に言いたかった事が今だに解らなかった。

彼女は思う。

自分が殺して遺棄した死体のそばで暮らし続けてるとユウイチが聞いたら何と言うだろうか、と。