「彼女は訪ねてきた時点で既に目的の物が此処にはないと知っていたようだった」




そこまで言って庄左衛門は一度言葉を切る。


そしてふ、と息を短く吐くと庄左衛門の纏う空気ががらりと色を変えた。


ぴりっと肌に触れるようなそれに無意識に手に力が入る歳三。




「……君は…"村正"という刀を知っているかい?」




告げられた名前に歳三はカッと目を見開いて庄左衛門を凝視する。




い、ま…なんて…?




【村正】



それは言わずと知れた妖刀と呼ばれた刀の名前。


徳川幕府とも因縁深いと恐れられている一級品のその刀。