好きだけじゃ足りない



「答えられねぇの?」


一歩を踏み出し、詰め寄られて心臓が凍りそうだ。



「メグ、」

「別に、っ…そこら辺ブラブラしてただけよ!」


苦しい言い訳なのはわかっていたけど、ほかの言い訳なんて思い付かなかった。
伊織から目を逸らして、地面を睨みながらただ…ばれないように祈るしかなかった。



「…電話にも出ないで、か?」

「……気付かなかっただけよ…」

「ふーん……」


値踏みするように私を見る伊織の視線から逃げ出したかった。
それでも足を踏ん張ってなんとか留まり、伊織をチラリと見上げて顔色を伺う。



「馬鹿か、お前は!」

「な…っ、馬鹿はないじゃん!」

「馬鹿だ馬鹿!俺がどれだけ心配したかわかってんのか!?
電話も出ない、メールだって返さない。

何かあったかと思うじゃねぇか!」


公衆の面前で怒鳴られ怒られるのはすごく格好悪いと思う。
でも、私のためにここまで心配して怒ってくれる事が少しだけ嬉しかった。



「勝手にいなくなるなよ。」

「ん…ごめん、心配かけて…」

「次やったら縛り付けてでも外出さねぇからな。」


本気なのか、それとも冗談なのか。
恐らく本気であろう言葉に、伊織に抱きしめられたまま私は苦笑いをするしかなかった。