社長室には不自然な雰囲気が流れて居心地悪く、伊織の腕から抜け出そうともがいてみた。



「暴れんなって。」

「や…いい加減離してよ!」

「却下。メグ、抱き心地良いもんなー。」


またコイツは…っ!
あれだけ蹴りをプレゼントされても懲りないコイツはある意味あっぱれな奴だ…。
多少の悲願を込めて拓海さんを見ても、拓海さんは苦笑いを浮かべて小さく頭を振った。



「…………伊織?」

「なに?」

「……離してくれない?」


ちょっと優しく言ってみても、余計に力を込めて抱きしめられて…嬉しいけど、今はやめてほしい。



「無理。却下。」

「じゃあ………プレゼント、ほしい?」


にっこり極上の笑顔を伊織にプレゼントしたら、口許を引くつかせながらようやく離れた。



「………すいません。」

「わかればよろしい。」


そんな私と伊織のやり取りを見て、肩を震わせ笑うのは拓海さん。
何がそんなにおかしいのかが全くわからずに首を傾げる私と、何か気付いたのか拓海さんから目を逸らす伊織。

――…全く、意味がわからない。



「良いコンビだよ、二人は」

「うるせーよ……それより、仕事だろ。寄越せ!」


何を苛々してるのか、伊織は拓海さんの手から書類を引ったくって座り心地良さそうなソファーに偉そうに座った。