にっこりと笑いながら蹴りをプレゼントしてみたら、前屈みになりながら半泣きの伊織。

罪悪感がないわけではないけど、それ以上に腹が立っているわけで…



「社長室行くんじゃないんですか?英部長?」


厭味を込めて言えば本当に泣きそうな伊織と目が合って、ほんの少し罪悪感が膨らんだ。



「……っ、おま……足癖悪ぃ…」

「そうさせてるの誰。」

「っ、俺は素直に生きてるだけだっつーの……はぁ…」


多少は痛みに打ち勝ったのかはわからないけど、いつものコイツに戻りつつある。
ため息を吐きながら、それでも怒りはしない伊織に今度からは少し優しくしてあげようか…なんて思った。



「その足癖だけは治せよ。」

「無理。アンタが変態行為やめるなら考えてもいいけど。」

「変態行為なんてしてねぇし。

好きな奴に触りたいのは変態行為なんかじゃねーだろ。」


はっきりと、"好きな奴"と言ってくれた伊織に多少はときめいたけど…変態行為が尾を引いて素直に喜べないのがまた悲しい。



「俺はメグが好きだから触りたい。
愛してるから抱きたい。

ただそれだけのシンプルな事だろ。」


本来なら私と伊織の関係に愛だの恋だの求めちゃいけないのかもしれない。
それでも、それを意図も簡単に言ってくれる伊織。

三年前から変わったようで、根本的なものは何一つ変わっていない伊織にうれしくなった。


まだ、私が知る伊織がたくさん残っている事が嬉しかった。