私は、海外のいろんな場所を転々としていた。
両親の仕事柄仕方がないものだったけど…。

転々としてる中で伊織と出会って付き合い始めた。


三年前、伊織とあんな別れ方をして…逃げるように日本に帰ってきた。二度と会わないように。

それなのに、どうして出会ってしまうんだろう。
伊織だけじゃなくて…円香さんにまでどうして…?



「……昨日だって帰ってきてないでしょう。」


チラリと向けられた視線に冷や汗が流れた。
円香さんが何を思っているかなんてわからないけど、確かに今、私を見ていた。

円香さんの視線にまた目を逸らし、何も考えられずにいた。

やっぱり、罪は罪でしかないのだろうか…。

好きなだけでは駄目なのだろうか。


どれくらいそうしていたかなんてわからなかった。
気が付けば、伊織が私の肩を揺らし、苦笑いをしたまま私を見ていた。



「……行こう、」

「は…い、英部長。」


意地だった。目の前にいる伊織に対しても、私と伊織を見ている円香さんに対しても。

傷付いているなんて気付かれたくなかったから、理性を総動員して精一杯の虚勢を張るんだ。