好きだけじゃ足りない



生活感がない、グレーとオフホワイトで纏められたリビング。

オフホワイトの高そうなソファーが我が物顔でリビングの真ん中辺りを陣取る。



「適当に座っとけよ。」


それだけ言ってリビングの奥、ダイニングキッチンに向かう伊織の後ろ姿を見ながら小さくため息を吐き出す。

不必要にでかいプラズマテレビとガラスのローテーブル。オフホワイトの三人掛けソファーと一人掛けソファーが二脚。
夜景が綺麗に見渡せる大きな窓の近くの壁際にはサイドボードが置かれていて、その上には写真立てが幾つか並んでいた。


清潔と言うよりは生活感がない。
あまり此処には来ないのか……当たり前だよね。
自宅には奥さんが待ってるんだから。


落ち込む気持ちを振り払うようにサイドボードに置かれている写真立てを手に取って飾られた中身を見た。



「…っ…………これって…」

「五年前の旅行のやつ。」


グレーとオフホワイトのカップを持って後ろに立っていた伊織に肩を揺らし、信じられない気持ちで写真立てを凝視した。



「懐かしいだろ?」

「……まだ持ってたんだ…、こんなもの。」


嬉しい、すごく嬉しいよ。
伊織が私を覚えていて、こんなちっぽけな写真を綺麗な写真立てに飾ってくれるなんて。

死ぬほど嬉しい。



「…それだけじゃねーよ。
メグと撮った写真なら全部此処にあるからな。」

「うそ…」

「なんなら見る?」


優しく笑う伊織に嬉しいのか、なんなのかわからない。
でもやっぱり嬉しくて、鼻の奥がツンとしてしまう。