「…………相変わらず無駄に金持ってんのね…。」

「まぁな。欲しいもんあるなら何だって買ってやるけど?」


モスグリーンのアウディが入ったのは都心から少し離れた場所にある、所謂、億ションと言う物の地下にある駐車場。

アウディを降りて、地下駐車場にあるマンションへの入口は指紋センサーとカードキーで厳重な鍵が掛かっている。


厭味とも取れるコイツに少し…いや、かなりイラッとしながら睨みつければヘラッとした笑いを返された。


―――…世の中の敵だ。



「ほら、入れよ。」

「…………ほんと…アンタむかつくわ。」

「…なんでだよ。」


私の言葉に眉を寄せる伊織も厭味な位にいい男で余計腹が立つ。

…ただの八つ当たりな気もしなくはないけど。

腰に回された腕の手の甲を爪で捻ると伊織は涙目で私を睨みつけて来る。

ふん…ざまぁみろ。
なんて思いながら素直になれない自分に自己嫌悪を覚えた。



「おま……はぁ………あまのじゃくなお姫様だこと。」

「っ…うるさい!」

「はいはい、ほら…来いよ。」


軽く受け流してしまうあたりコイツは大人なんだろうけど、それに余計に腹が立つ。

自分は伊織にはふさわしくない。ふさわしいのは円香さんだって言われているような気さえしてしまうから。


一人で落ち込む私の腰に回った腕に力を入れられ、気付けば目の前に伊織の端正すぎる顔。