「さーて……俺はお暇しよっかなー。」

「彬…頑張れよ。」


ほら、これだけで気心が知れた間柄なら仲直りできるんだから。

マスターに手当てされ両手の掌に巻いた包帯に私は眉を寄せてしまった。



「ごめんね…彬くん…。」

「あぁ…これ?メグちゃんのせいじゃないでしょー。大切な"友達"守った傷なら名誉だし。」

「――…ありがとう、」


ヒラヒラと包帯が巻かれた左手を振りながら笑ってくれる彬くんに何度もありがとうと呟いた。



「今度、二人で飲みにいこっか。いっちゃんに内緒で。」


にんまりと笑いながらの彬くんの言葉に苦笑いをこぼしてしまう。

内緒、それは伊織が此処にいる時点で叶わないのに。

それでも幸福な気持ちを隠さずに大きく頷いて見せたんだ。



「てめ…彬!メグも何で頷いてんだよ!」

「あ、いっそ浮気者のいっちゃんじゃなくて俺にしない?」

「っ、いい加減にしろ!」

「あはは…じゃあ彬くんにしよっかなぁ?」


今が永遠に続けば良いと思う。

伊織がいて、自然体な彬くんがいて、それに便乗する私。
そんな私達を見守ってくれるマスターや拓海さん達。

何年も掛けて、ようやく手に入れた幸せは凄く暖かかった。