下を向いたまま笑う私の肩にマスターの掌が乗せられてまた薄っすらと口許に笑みを貼り付けた。



「メグちゃん…?」

「ごめんなさい。専務がこんな事したの私のせいなんですよね?」


自分でも驚くくらい明るい音色だったと思う。
私の声にみんな驚いているのは見ていてわかる。

それにまた笑って、周りからの視線から逃れるように床に視線を向けて一歩を踏み出した。



「専務はこんな事したくなかったんですよね…?だからいつも苦しそうだったんですよね。」

「何言ってんの?俺は」

「好きなんですよね?」


これは私の中で確信に近いものだった。いや、むしろ確信だったんだ。
それは専務の今の表情でより確信に変わってしまう。

専務はただ自分の愛した人を守りたかっただけだったんだ。



「……私がいなければ…全てが丸く納まる…。」

「っメグ!」

「ごめんね、伊織…私も限界なのかもしれない…」


ごめん、ごめん、ごめん。

ただそれしかなかった。


私の言葉は…真実と偽りの狭間の中に消えてなくなってしまうんだ。




「メグ…やめろ!」

「メグちゃん、それを離して…」


大好きな人の前で、私は人として最低な事をする。

両手で握った物をゆっくりと確信に近付けていく。




ごめんね、伊織…。