伊織が"可愛い"と言うなら可愛いだろう女の子に少なからずヤキモチを妬いてしまう。

それをできれば悟られたくなくて表情を押し込めながら同僚に渡すお土産を選ぼうと視線をずらした。



「お前、可愛い奴だなぁ。」

「…何が。」

「ヤキモチ妬いた?ウサギちゃんに。」


にんまりとにやにやが混ざった笑みを見ないようにしながらお土産を選ぶ。

ウサギ、は多分その"可愛い"女の子のあだ名だと思う。

あだ名で呼ぶ位にその女の子を気に入ってる伊織がまた気に食わない。



「ウサギちゃんはウサギちゃん。あれは完全に妹タイプだな。」

「だから?」

「妹には恋愛感情なんてねぇよ。俺が好きなのはメグだけ。」


サラっと公言する伊織にさっきまでのモヤモヤなんてどこか遠くにおさらばしてしまう。

変わりに表情を押し込めたはずの口許は無意識にだらし無く緩んでしまう。



「…っ馬鹿じゃないの!」

「馬鹿は馬鹿でも俺はメグ馬鹿だから良いんだよ。」


サラっとそれは当たり前のように嬉しい事を言ってくれる伊織に胸の奥がモヤモヤじゃなくてホカホカする。

沖縄に来て、少しは素直に言葉にしようと思っていてもそれは簡単には実践はできなかった。