話す、と決心したは良いけど…どこをどう説明しながら何を話せば良いかがわからない。

眉間に皺を寄せたまま固まっている私に苦笑いをして伊織は閉じたまま言葉を待っていてくれた口を開いた。



「言いづらいんだろ。」

「……まぁ…ね。」

「じゃあ、俺がする質問に答えてくれよ?」


右手に感じた暖かい大きな手に、無駄に力が入った肩の力を抜いて小さく頷いた。



「俺と再会してからソイツに脅されたんだよな?」

「……うん。」

「じゃあ、ソイツは俺の事も円香の事も知ってる奴だな。」

「…そう、だね。」


淡々とした口調に肩にまた力が入る。
ただ、繋がれた右手の暖かさで多少は和らいでもやっぱり恐怖なのかなんなのか。

不安は拭えなかった。



「俺も円香も、しかもメグの事も知ってる奴なんてほとんどいないはずだ。」

「……まぁ…うん…。」

「だったら…答えは簡単だろ。」


ギュッと握られた右手がほんの少し痛んでしまう。
ただその痛みはまるで今の伊織の心情を表してるみたいで、振り切る事なんてできなかった。