言う、と言ったは良いけど何をどう言ったら良いかわからずに伊織の腕の中で大人しくしてしまう自分。



「……帰るか。」

「…は?」

「流石に寒いだろ。」


伊織の腕から解放されて一つ安堵のため息を吐いた。

――…このままごまかせるかも。

なんて考えた私の思考を見越したように伊織は口許だけに笑みを作っている。



「帰ったら全部聞かせてもらうから。」

「………ですよね…。」


結局、伊織に左手を握られたままサクサクと砂を鳴らしながら真っ暗な砂浜を歩く。

沖縄とは言え、11月はひんやりした風が吹いて正直寒い。

冷たい風を体に受けながら左手だけは暖かい。



「なぁ、メグ。」

「んー?」

「一人で解決しようとすんなよ?
お前には俺がいるだろ。」


暗い夜道をゆっくりと歩きながら耳に届いた言葉に胸の辺りがじんわりと暖かくなる。

言葉が足りない私をよく知ってくれている伊織にいつもだけどすごく救われる。

じんわりと暖かくなる胸に口許を緩めたままで、返事の代わりに繋がった左手に少しだけ力を込めた。