「今日は伊織君の嫌いな物尽くしで行きましょうか。」
「え……あははは…はぁ…」
目をキラキラさせて良い笑顔を見せる明さんに逆らうなんてできるはずもない。
――…伊織、ごめん。
心の中で一度謝ってから山盛りに置いてあるゴーヤの一本を手に取って水道水で洗う。
「洗ったら縦に半分に切って…そうそう。中の種とかは出して…」
初めて調理するゴーヤに悪戦苦闘しながらどうにか下拵えを終えたのは夕方の6時過ぎ。
下拵え以外は全く手伝えない私はダイニングテーブルの椅子に座り明さんの調理する後ろ姿をボーッと眺めていた。
「さっきはごめんなさいね…私差し出がましい事ばかり言ってたわよね。」
「そんな……明さんに言われなきゃ私…ずっと変わらないままでした。
伊織にちゃんと自分の気持ちとか言葉にして伝えようなんて思えなかったし…」
まだ伊織は帰ってきてない。
帰ってきて、ご飯を食べたら今までの事を話そうと思っている。
そう思えたのは明さんから言われた言葉の御蔭。
沈んだ声を出す明さんに申し訳なくなった。私がちゃんとはっきり言えるタイプならあんな風に言わせなかったかもしれない。
謝るのは私の方だ。