『クルマとタバコとカンコーヒーと…』【リアル物語ケータイ小説版】

第94話

 数日後、昭太郎は移植審議会が行われるマークス病院にいた。

古くて威厳のある建物だ。

 審議会の会議室には30人を越えるドクター達が構えたところで検査データが配られ、ドクターからの質問を倉本が通訳し患者が答えるという形式で進行している。

そして最後の質問は患者の決意表明だった。

 多くの外人ドクターの前に立ち、昭太郎は宣言した。

「私は生きるという選択肢を選びました。これからも生きていきたいと思ったのでここに来ました・・・・それだけです。宜しくお願いします」
 頭を深く下げる昭太郎。

淡々と通訳する倉本。

何も言わずうんうん頷くドクター達は少し不気味だった。

 会議室を後にした昭太郎。

入れ替わりで入室する磯野。
(なんで後から来た磯野と一緒に会場入りをするんだ?・・・・契約社会なのに、決意表明なんて泥臭いこと聞くんだなぁ・・・)と待合室で考えていた昭太郎。

「契約社会だからこそ決意表明は必要なのか?・・・よくわからん・・・まぁ、1つずつこなして行こう・・・」

 両手を伸ばして体を反らせた。

 
 その日の夕方、倉本から電話があり、病院内の倉本のオフィスを尋ねた昭太郎。

 倉本は箇条書きに書かれた書類を棒読みで告げた。

「移植リストに載ることができました。今から移植の連絡が入る可能性があります。移植の連絡はこのポケベルでします。いつでもこのポケベルを常備していてください。そして今週中にこの口座に手術費を入金してください」

 少し大きめのポケベルと口座番号が記入された紙を渡された。

紙をポケットに詰め込み、ポケベルを握りしめた。

丘を下りながら「運命のポケベルか・・・」と呟いた昭太郎はそのポケベルを空に掲げていた。


 《本日、無事に移植リストに載ることができました。
  そして、運命のポケベルをもらいました。
  このポケベルが鳴ったとき、僕は手術台に向かいます。   大林昭太郎》

 3行の短いメールを送信した。

そして、机の横に置いてあるポケベルを暫く眺めていた。