『クルマとタバコとカンコーヒーと…』【リアル物語ケータイ小説版】

第92話

 結局、予定の移植審議会には検査が間に合わず、次回の審議会へ繰り越されていた。

 長引く検査の日々、ボタンダウンのオックスフォードシャツにブラックジーンズを合わせたドクターは「その体重では移植手術には耐えられない」と告げた。

「吐き気で思うように食事がとれないんですけど・・・」

「OK! No problem」

ドクターが出した指示はチューブを鼻から通して胃まで入れて栄養剤を定期的に注入するということだった。

このガンダムのザクのようなスタイルを義務付けられた。



「少し太ったんじゃない?」とベット横に座る母親が言った。

「あぁ、このチューブで時間事にメシ食ってるようなもんだからね」と鼻に繋がる黄色いチューブを軽く弾いた。

「昭太郎、聞いてよ、家に猫が来るのよ」

「どんな猫?」

「白黒の猫で5月に来たからメイって名前にしたの」

「相変わらずだね」

 昔から昭太郎の母親は猫や犬を拾ってきては飼っていた動物好きだった。

異国でも変わらない母親に感心した。

そして少し安心した昭太郎の顔はほころんだ。

「こないだハムあげたら食べたのよ、だんだんなついてきてるのよ」

「よかったね」

「退院したら楽しみにしてね、そう、こないだ買い物に行ってお肉を一切れ買うのに困ったから、一度帰って、『肉一切れ』って言う英語を勉強してからもう一度買いに行ったら買えたのよ!」と嬉しそうに語る母親の表情を確認する昭太郎。

「英語で何て言うの?」

「えーっと、ワンピーセス・・・なんとか」

「なんとかって・・・」

「大丈夫!買いに行くときは書いてその紙持っていくのよ」

「・・・・・」

 元気に生活している母親にたくましさを感じた。

英語ができないはずの母親が頑張っている姿を見て、チューブの苦痛を嘆くことは辞めようと思う昭太郎だった。