第79話

「敏哉へ、俺はガキの頃から敏哉に憧れていた。ズルをしないお前の男気にみんな憧れていたんだと思う。お前に近づきたくていろんなことを真似したのを思い出すよ、こんなこと今更言いたくはないが、やっぱり、いつの日かお前に近づきたいと思ってる。必ず帰ると誓います。大林昭太郎」

 手紙を渡した昭太郎は敏哉の目を見つめて、その手を掴んだ。


「光隆へ、出逢った頃の君に俺は感動したよ、人間に対して引いていた俺を確実に成長させてくれた。いつも優しさは隠しきれてないところが格好良かった。あと、長いこと光隆とつきあっているが1度だけ君に悪態をついたことを覚えている。女のことだった、それもくだらない通りすがりの女のことだったな、でも俺の気持ちは光隆への友情だった。あの頃も今も争点は友情についてだ。周りはいろいろ言うかもしれないが、光隆との友情を確信していたい。お前らと生きることが俺のアイデンティティだ!大林昭太郎」

 手紙を織って光隆に差し出す。
そこにある手を強く握った。

 半分遺言、半分決意表明のような手紙を渡した昭太郎は泪をこらえながら3人を見回し、話しを続けた。

「俺、明日オーストラリアに旅立つよ。そんで、生きて帰ってくる・・・っていうか手術するまで帰ってこれない。1年、2年。わからないけど、がんばってくる。お前らと一緒に今までいれて楽しかった。お前らと同じ時代に生まれてよかった。同じ時代に生まれたお前らと一緒に生きていきたいから旅に出る。長い旅に出る。待っててくれ・・・そして、とりあえず、ありがとうだ」

 そう告げたとき昭太郎は泪を流した。大声で泣いた。
長年付き合ってきて始めてみせる大泣きだった。

 普段と何も変わらない高層ビルの1室で泣き明かした夜だった。