第74話
やけに寒くなったその日、冷たい空気が頬をさす。
空が少し暗くなり始めていた。
小さな川縁で腰をかがめてシャッター音を鳴らす昭太郎。
ファインダー越しの鳥たちが音を立てて一斉に羽ばたく。
架かる橋の上に停まるセダン。
助手席のドアから出て来たコートの女はカツカツとブーツの踵を鳴らしながら向かってきた。
「何やってんのよ」橋の上から聞こえる懐かしい声。
「何って、写真・・・」
そこに腕組みして立つ女が昭太郎を見つめる。
その女は病院での別れを最後に一言も話していなかった元彼女だった。
険しいというより無表情に近い顔で話す由紀がそこにいた。
カメラを片手にゆっくりと立ち上がる昭太郎。
少し困った表情で由紀を見上げる。
「そんなこと、見れば分かるわよ」
「なんだよ」
「何グズグズやってるのって言ってるの」
立ちつくす昭太郎。
「由紀・・・」
「由紀なんて呼び捨てにしないでよ、もう彼女じゃないんだから」と言い捨てる由紀。
「・・・」
「何で手術しないのよ」
強い発言に戸惑う昭太郎。
「いいだろ、そんなこと」
「みんなにちまちま小説送ってるんだってね、写真とか撮ってゆっくり生活してるんだってね」
「いいだろ、俺が好きでしてるんだから」
かったるそうに答える昭太郎に由紀が更に強く責める。
「何で手術しないのよ、しないと死ぬんでしょ!」
「・・・・・・」
「さっさとしなさいよ、早くしなさいよ」
「・・・・できないんだよ」
「どうしてよ?」
「親戚にドナーになるの断られた」
「じゃあ、海外にでもなんでも行けばいいじゃない」
やけに寒くなったその日、冷たい空気が頬をさす。
空が少し暗くなり始めていた。
小さな川縁で腰をかがめてシャッター音を鳴らす昭太郎。
ファインダー越しの鳥たちが音を立てて一斉に羽ばたく。
架かる橋の上に停まるセダン。
助手席のドアから出て来たコートの女はカツカツとブーツの踵を鳴らしながら向かってきた。
「何やってんのよ」橋の上から聞こえる懐かしい声。
「何って、写真・・・」
そこに腕組みして立つ女が昭太郎を見つめる。
その女は病院での別れを最後に一言も話していなかった元彼女だった。
険しいというより無表情に近い顔で話す由紀がそこにいた。
カメラを片手にゆっくりと立ち上がる昭太郎。
少し困った表情で由紀を見上げる。
「そんなこと、見れば分かるわよ」
「なんだよ」
「何グズグズやってるのって言ってるの」
立ちつくす昭太郎。
「由紀・・・」
「由紀なんて呼び捨てにしないでよ、もう彼女じゃないんだから」と言い捨てる由紀。
「・・・」
「何で手術しないのよ」
強い発言に戸惑う昭太郎。
「いいだろ、そんなこと」
「みんなにちまちま小説送ってるんだってね、写真とか撮ってゆっくり生活してるんだってね」
「いいだろ、俺が好きでしてるんだから」
かったるそうに答える昭太郎に由紀が更に強く責める。
「何で手術しないのよ、しないと死ぬんでしょ!」
「・・・・・・」
「さっさとしなさいよ、早くしなさいよ」
「・・・・できないんだよ」
「どうしてよ?」
「親戚にドナーになるの断られた」
「じゃあ、海外にでもなんでも行けばいいじゃない」



