『クルマとタバコとカンコーヒーと…』【リアル物語ケータイ小説版】

第64話

 ダウンジャケットの勇介は夜中に非常口から侵入した。

山梨だろうが静岡だろうが病院のシステムはさほど変わらない。

冷え冷えする夜中の喫煙室ではいつもの2人だった。

「親に承諾もらってきたよ、俺の肝臓で移植してくれないか」
 突然本題に入った勇介に正直な気持ちを語る昭太郎。
「そうか、ありがとな、お前は本当に優しいな、親に怒られなかったか?」

「そりゃ、少しはビビってたけど、あなたが決めたならいいんじゃないって言われたよ」

「・・ありがとう」

「じゃあ、やってくれるのか」

「ごめん・・・・・・できないんだ。友達じゃ移植できないんだ」

「そうなのか、親戚じゃないとダメなのか・・・・相変わらずボケてるなぁ、俺」

「3親等までじゃないとダメなんだ・・」

「・・・・・」

「お前には本音話すよ」

「あぁ」

「俺・・・・・自殺してぇーょ・・・」

「・・・・・」

「自殺したいけど、自殺したら親とか友達とか辛れぇだろ、親とか友達とかいなかったら、死んでるよ、多分」

 ・・・・

 煙がゆらゆらと昇るのを見つめる昭太郎。その横顔を見つめる勇介。

しばらくの沈黙をやぶったのは勇介だった。
「わかるよ、俺もよく死にたくなるしな、俺ってダメなヤツじゃん。いろんなこと器用に出来ないし、人の気持ちもよく分からないから人生結構大変で、よく死にたくなるよ。その自殺も手伝ってやりたいけど、・・・そんなことしたら昭太郎のかーちゃんやみんなに怒られるだろうし、できないわ。 孤独なヤツは楽に死ねるんだろうにな・・・」