『クルマとタバコとカンコーヒーと…』【リアル物語ケータイ小説版】

第61話

 フリースのチャックを首まで閉めた昭太郎は東屋に独り腰かけ、タバコに火をつけた。

 落ちかけた夕陽。山の向こうの空が赤く滲む。

 行き交う病人達を眺めながら独り黄昏れる。

(俺は結構いろんなことやってきたよなぁ・・・・
人よりいろんなことできたし、
人よりスポーツも出来た方だし、
テニスにゴルフ、サッカーにスキー。
サーフィンに・・・ボウリングも結構上手かったよなぁ、
モテないほうじゃなかったし、
勉強だってまぁまぁだった、
いろんな所にも行った。
出張が多くて辛かったけど、お陰で全国のいろんな所見れたしなぁ・・・・
地方の名産も色々食ったし、
よくやったろ俺は・・・・。
もうあんまりやりてぇこともないか・・・・。
病気になったのが小さい頃じゃなくてよかったよな・・・・・)

 車イスを押された病人を眺めながら、

「あの人は楽しいのか?・・・」と呟いた。


 昭太郎は希望を持たないように努めた。

次の挫折に耐えられないと感じた昭太郎は自分を納得させようとし始めていた。