『クルマとタバコとカンコーヒーと…』【リアル物語ケータイ小説版】

第190話

 しばらくの沈黙を昭太郎が破った。
「何で・・・」

「あの時の病気、治って退院した訳じゃなかったみたいで・・・」

「教えてくれればよかったのに」

「そりゃ、無理だろ、わかってやれ」と小野里。

「俺、オーストラリアに行く前に長沼さんに髪切ってもらったんだけど・・・お店だって、自分の店をオープンさせて頑張ってたじゃないですか」

「・・・・・」

「長沼さん、先が短いこと知ってたみたいですよ・・・でも、それ知ってても、お店始めたらしいです・・・・」

「じゃあ、退院する時からその覚悟だったってことか・・・」

「そこまでは知らないですけど・・・」

 ・・・・・・

「今から長沼の墓参り行くか、昭太郎、行ってないから・・・」

 小野里のその言葉で3人は席を立った。

 外は霧雨が舞っていた。

夜中の墓参りに出向いた3人。

線香の変わりにタバコを添えた。

夏の夜の墓場、手を合わせる3人。

昭太郎は長沼と交わした最後の言葉を想い出していた。

自分の店を立ち上げた戦友。

笑顔で送り出してくれたあの時、長沼はどういう気持ちで「がんばれよ」と言ってくれたのだろう。

死ぬとわかっていて店を出すということ、そこに長沼の心意気を感じていた。

人は力量以上の勇気を見たときに泪を出すものだ・・・。



 【あの時の僕は大きな覚悟を見せられた。
生きたかった亡き者に、やりたいことをやって生きることを教えられた。
ちゃんと生きよう・・・。
それにしても、病気になってから出会った人が死にすぎる。
もういいよ・・・。】