『クルマとタバコとカンコーヒーと…』【リアル物語ケータイ小説版】

第189話

 小野里の酒が進み、会話は深くなってきた。
「佐野、お前はそのままでいいと思っているのか?会社に戻ってそれでいいのか?」

「小野里さん・・・」昭太郎が止めようとしたが小野里は聞かなかった。

「いいから訊け。俺たちはマイナスを味わった。ゼロに戻るんじゃなくて、マイナスをプラスに持っていかなきゃダメなんだ。お前はまだゼロに戻っただけだ!ゼロじゃ、もったいないだろ!あんだけ苦労したんだからナシにしたらもったいないだろ!」

「・・・・・」

「志は高くだ!」小野里の口癖。

「昭太郎!お前も訊け。ダメなヤツほど理由がいっぱいあるもんだ!でも、お前は焦るな、人生焦ったヤツから負けていく!」

「はい・・・小野里さん・・・変わらないねぇ」

「あたりめぇだよ」ガッチリ組まれる手と手。体育会系病院部OB会・・・。

「嬉しいっすよ」

「俺もおめーにまた会えて嬉しい」

 小野里の人生哲学は懐かしくもあり、あの頃、毎日悩んでいた俺たちを思い出させた。

俺たちはマイナスがあるから今ここにいる・・・。

『誰かに良いと言ってもらうために生きているわけではない。自分の人生、自分でOK出しできるように頑張ろう』あの頃の結論を想い出した。


「昭太郎さん・・・昭太郎さんに話さなきゃいけないことがあるんです」しょげた感じで話し出す佐野に(泣き上戸?)と首を傾げる昭太郎「おう、今、燃えてきた。なんでも来い」

「あのぉ・・・」

「何だ、言ってくれよ」

「佐野!長沼のことか」横から小野里が声をかける。

「はい・・・」

「長沼って美容師の長沼さんのことですよね」グラスを置いた昭太郎。

「はい・・・」

「長沼は死んだ。昭太郎が海外に行ってる間に長沼は死んだ」小野里がジョッキを飲み干す。


・・・・・