『クルマとタバコとカンコーヒーと…』【リアル物語ケータイ小説版】

第181話

 夜中の喫煙所にギターの音色が鳴り響く。

唄う三島に観客3人。

1階の隔離されたオアシスだからできる夜中のギグ。

「ラッキーだな、入院してこんな演奏が聴けるとは思ってなかったよ」と糖尿病の自動車整備工が声をあげて拍手する。

「三島君、唄うまいね」と白い杖をつく工藤は下を向いている。

 少し照れたように手を挙げて応える三島に3人の拍手がパラパラ起きる。

「いいねぇ、病院もこういうことがなくちゃね」と昭太郎。

「工藤さん、三島君はもうじきデビューするんだよ、そんな人に唄上手いねはないんじゃない?」と気さくな整備工。

誰とも目線を合わさずに頷き「そうか、どうりで上手いと思ったよ・・・CDとかでるの?」と訊く工藤。

「はい、CDはインディーズでも出してるんですけどね」

「俺、デビューしたら友達っていってもいい?」と陽気な整備工。

 昼間寝過ぎて夜中に起きてくるナース泣かせの人々・・・。

 三島が昭太郎の横に座り、ギターのハードケースを開ける。

「昭太郎さんは昼間見ないっすよね」

「ああ、昼間は体調悪くて、ずっとベットで寝てるからね」

「毎日ですか?」

「うん、毎日欠かさず、2年は気持ちいい朝迎えてないな」

「大変ですね」

「まぁ・・・病人だから」

「みんな大変だよな、あそこの工藤さん、もうじき全盲になるらしいですよ」指さす三島。

「指さすなよ」と少し焦り気味に三島の指を掴む。

「大丈夫っすよ、もうほとんど見えてないらしいですよ」小声の三島。

「三島君は悪ガキだね」

「まぁ、ロッカーですから」

「なんじゃそりゃ」