『クルマとタバコとカンコーヒーと…』【リアル物語ケータイ小説版】

第168話

秋晴れの爽やかな夕方。

山の高台で街を見下ろせる霊園の駐車場に愛車を止めた。

誰もいない砂利道をゆっくりと歩く、水桶を横目に諦める昭太郎。

親父の墓前であぐらをかき、線香をくべる。

タバコに火をつけて、煙りたつ線香の横に添えた。

「まぁ、1本いってくれ」
掌を合わせて頭を下げる。


「おやじ、ただいま・・・・帰って来たよ。今日はひとりで来たんだ。すげぇだろ」
少し微笑んで、もう1本のタバコを取り出して口にくわえた。


「・・・・・正直に言うわ・・・・俺、どうすりゃいい・・・俺、元気になれるかな・・・・毎日、結構辛いよ・・・吐き気はとまんねぇーし、脚はあんまり動かねぇーし、どうしたらいいかわからねぇ、元気じゃねぇーといろいろつまらんよ。・・・・・俺、何したらいいんだろ・・・・・・良くなるかな?・・・・・・良くなるよね・・・・きっと大丈夫だよね・・・・。あと、借金あるし、かーちゃん働かせてるし、俺、立場ねぇーよ・・・宝くじとか当ててくれねぇーかな・・・・」
 口元から火のついていないタバコを手に掴み頭を下げる。


「ごめん、ごめんなさい。・・・そうだよね、そんな弱気じゃダメだよね、俺が元気になって何とかしなきゃね・・・・そう、わかってる。オヤジは俺が泣きごと言ってるの嫌いだよな・・・・わかってる」
 
くべた線香が燃え尽きるのを確認して「また来るよ・・・」地面に両手をつきながら立ち上がった昭太郎はズボンをはたき、右手を軽く挙げた。

両手を穴ポケットに入れて空を見上げる。

夕暮れの山の中に漂う緑の匂い。

墓石を背中に歩き出した・・・。