『クルマとタバコとカンコーヒーと…』【リアル物語ケータイ小説版】

第166話

2ヶ月後、暑さも陰りを見せ始めた頃、昭太郎は少し力強く歩けるようになって退院した。

山梨の実家でのスローライフが始まろうとしている。

母親は働きに出るようになっていた。

吐き気から始まる朝を迎え、血圧が安定するまで5時間の苦しみに耐える。

ここ何年の変わらない1日の始まり。

遠くで蝉の鳴く声が聞こえる夕暮れ、体調の落ち着いた昭太郎は実家の小さな庭に腰を落としタバコをふかした。

まるで老人のような昭太郎がそこにいる・・・。


いつもと変わらない庭には花がいっぱいに咲いていた。

ガキの頃からの変わらない風景。

花好きな母親がつくった庭をいつも見てきた昭太郎は花なんて歳をとったらわかるものだといつも考えていた。

少し綺麗だなぁと思うことはあっても花に対しての意識は1分と持たずに見過ごしてきた。

今日、足元の花がやけに綺麗に見える。

今日は何か違って見える。

花が咲いていることは当たり前だったけれど、花が咲いていることに何かを感じた。

そして、こんなことがあっても変わらずに水をあげ続け、花を咲かせている母親はずげぇーなと感じながらボンヤリと庭を眺める昭太郎がそこにいる・・・。



 【あの時の僕は祭りのあとのような気分で遠くを見つめていた。
全てが終わり、みんな喜び、俺も喜んだ。
激動の1年を過ごした後に残ったモノ・・・。
変わらないという安心感と変わらない病状。
不自由な身体と妙に落ち着いた心。
・・・それに借金。
全ては終わったのだ。
でも、何かが足りない。
何かが足りないという気持ちはその人を孤独にする。】