『クルマとタバコとカンコーヒーと…』【リアル物語ケータイ小説版】

第129話

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「手術・・・できないの。手術は見送りになったの」と母親が涙を溜めて言った。

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「どういうことだよ・・・」小さい声で訊く。

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「電話の報告があった後、ニュージーランドで急病人が出て、肝臓はニュージーランドに戻ったんだって。日本人よりオーストラリア人とニュージーランド人が優先だから、手術はできないの、肝臓は来ないのよ・・・」
 泣き出す母親の肩を支える綾乃。

「そうか・・・」呟く昭太郎は左上を向いた。

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「また来るよ」ポツリと光隆。

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「おお、明日来るかもしれないしな」ポツリと勇介。

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 昭太郎は明るく切り出した。

「だろ、何か実感湧かなかったんだよ、病室の番号も4とか13とか嫌な感じだったから、こんなことになるんじゃないかって思ってたんだよ、お前らがそんなに暗かったら、俺が暗くなれねぇーじゃんか・・・そうだとわかったら肩が痛くなってきたよ」
 左肩を押さえながら微笑む昭太郎。

少しずつ笑みを返す光隆、勇介、綾乃・・・母親。



廊下の電気は消え、足下灯だけが床を照らす。

廊下に置かれているソファに腰を落とす昭太郎と母親。

光隆、綾乃は壁にもたれて、勇介はしゃがんでいる。押し黙る5人。

昭太郎の声が廊下に響く。
「俺は今日、アパートに帰れないし、綾乃、勇介、かーちゃんをアパートまで送ってくれないか?」

頷く綾乃と「うん」と言った勇介はゆっくりと立ち上がった。

「光隆は?」と勇介

「光隆はちょっと借りる。すぐに帰すよ、いいだろ光隆」と光隆に顔を向ける昭太郎。

「あぁ」

「じゃあ、私たち行くね、おばさん!アパートに帰ろう」

 落ち込んだ表情を隠せない母親はただ頷いていた。