『クルマとタバコとカンコーヒーと…』【リアル物語ケータイ小説版】

第127話

「昭太郎・・・」と綾乃。

「よかったな・・」と光隆が微笑む。

 何も言わず親指を突き立てる勇介。

 フッと笑顔を見せた昭太郎が話しはじめた。
「・・・俺さ・・・今だから言えるけど、いつ足が動かなくなるのか不安でさぁ、毎日、毎日、足確認してたんだ。医者に後1年で歩行不能になるって言われてたから、怖くてさぁ、毎日ビビってた。ゲロ吐く度に体力無くなっていく自分が怖くてさぁ、・・・手術受ける前に帰されるんじゃねぇーかってビビってた・・・・・よかったよ。ほんとによかったよ。手術できるようになって・・・」

「昭太郎・・」

「もう大丈夫だ」

「今日から良くなるばっかりだよ」


「ショータロー、カモン!」
ストレッチャーを転がしながらナースが真面目な顔で呼ぶ。

母親と倉本も一緒に現れた。

「ペースメーカーを入れる手術よ」倉本が言った。

「ちょっくら行ってくるわ」と拳を固める昭太郎。

「おう!」

「頑張れ!」

 ナースはストレッチャーを低くセッティングしている。

「なんか今、泉谷しげるが頭ん中グルグルしてんだよ・・」

「泉谷しげるって俳優の?」綾乃が訊く。

「ああ、あのハゲたオヤジだろ!」と勇介。

「春夏秋冬って唄知ってる?」

「あぁ」

「今日で全てが終わるんだ~♪今日で全てが報われる~♪ってヤツ」

「知ってる」と言う綾乃と握手を交わす。

「今の心境はそんな感じか」光隆の手を握る。

「ああ、そんな感じだ」

「ありゃーいい唄だよな」と言う勇介と交わした手を振る。

「なんだよ、お前本当は知らねぇーだろ。ハゲたオヤジだけで唄は知らねーだろ」と光隆。

「まぁ、いいじゃねぇーか」


「Are you ready?」

「OkiDoki!」
昭太郎を乗せたストレッチャーはゴロゴロと音をたて廊下を走り出した。



 【あの時の僕は突然の報告に大喜びはしたものの、実際は実感が湧かないままストレッチャーに乗せられていた。
幸せは突然やってくる。
次の瞬間なんて本当にわからないものだ、幸せの法則なんてないんだろう。
来るときは来る、それだけだ。そう思っていた・・・。】