『クルマとタバコとカンコーヒーと…』【リアル物語ケータイ小説版】

第106話

 いつもの坂を上り、頂上で街並を見下ろす。

川に架かる橋を越えるといつもの商店街だ。

いつものベンチで一休みした昭太郎は帰路につく。

 芝生の中を流れる小川を渡り、ゆるい坂道を登り始める。

最近、往復ができるようになったことを嬉しく思っていた。

だだっ広く開かれた景色の中を進む一本道。丘の上のトンネルを目指して足下を見る。

 アスファルトに水滴がポツ・ポツ・ポツ。草木にあたる雨音が聞こえる。

急に暗くなり始めた空から大粒の雨がザァーっと降り始める。

スコールがアスファルトを弾く。

 背後から昭太郎を追い越してトンネルまで走りゆく人。

傘を差し始める人。

そのなかゆっくりと歩く、ゆっくりとしか歩けない昭太郎。

前髪から滴が落ちる。

 フリースが濡れて重さを感じる。

水分を含んだ靴がグシャグシャいっている。

それでもゆっくりと足を動かしながら昭太郎は考えていた。
(濡れたっていいよ、濡れたって大したことじゃないよ。わかってるよ。でも・・・・走れないって、こういうことだ・・・・走れないってこういうことだ・・・・走れたらトンネルまですぐなのに、ずぶ濡れにならなきゃならないってことだ・・・何かムカツク。なんかつまらねぇ・・・なんか悔しい・・・)降りしきる雨の中、そこにあるトンネルを目指して一歩一歩、足を動かしていた。