『クルマとタバコとカンコーヒーと…』【リアル物語ケータイ小説版】

第102話

 磯野の家に行ってから昭太郎はよく笑うようになっていた。

家に来る猫が2匹になり、母親との会話も増えていた。

月に一度のクリニックが終わって、診察室から出てきた倉本と昭太郎は廊下を歩いている。

昭太郎の足運びは前回のクリニックの時よりも遅くなっていた。

倉本はその足を一瞥して話しはじめた。
「大林君、だいぶ英語にも慣れてきたじゃない」

「少しずつです、はい。入院も長かったですしね」
 照れ笑いも半分、鼻のあたりを手のひらで撫でる昭太郎。

「チューブがとれてよかったわね、随分楽になったでしょ」

「ええ、チューブ生活にも慣れてきたところだったんですけどね」

「じゃあ、また付けてもらう?」からかうように倉本が言う。

「いいですよ、ノーサンキューです」

 廊下の角を曲がったところで倉本がポロッとこぼした。
「昨日、磯野さんが手術したのよ」

「えっ、どこか調子悪くなったんですか?」

 フッと笑った倉本は力のある目で昭太郎を見る。
「違うわよ、順番が来たの」

(何の順番だよ、何か順番待ちしてる検査とかってあったっけ・・・・?)

 考えながら気付いた昭太郎は眉を上げた。
「・・・・もしかして、移植ですか」

「そうよ」軽く頷く倉本。

「えっー!、だって磯野さんって僕と同じ時に移植リストに載ったから・・・まだ2ヶ月経ってないじゃないですか!」
 声が大きくなる昭太郎。

「別に期間は関係ないのよ」

「でも、いや、で、どうなんですか?」

「手術は終わったわよ、15時間位かかった大手術だったけどね」

「15時間!?」