第100話
フッと笑った磯野は呆れ顔で「そんな噂が流れてるのか」と言って続けた。
「ああ、行ってきたよ。いい海だった。綺麗な海だったよ、僕は三重の海の傍で育ったから海が見たくてタクシー飛ばしちゃったよ、1時間ぐらいだったかな」
「倉本さんには言って行ったんですか?」
「言ってないよ、言ったらダメだって怒られちゃうからね」
「なんでですか?」
「100㎞を越えた所はポケベルで呼び出しても、すぐに病院に来れないからだそうだ」
「不良オヤジですね」
磯野は大きく笑ってから話しはじめた。
「僕たちはまだ1ヶ月しか待ってないじゃないか、今だったらまだベルも鳴らないだろうし、鳴ってもそんなに後悔しないだろ」
「それはわからないですけど・・・」
「そんな弱気じゃ、ノイローゼになっちゃうそ、移植を待つってのは尋常じゃない精神力が必要なんだ。いつ来るかわからない手術をどんどん悪くなる体で待つことが大変なことぐらい僕にもわかるよ、でも、だからこそ毎日楽しく過ごすことが必要なんだ。それが僕の生き方だしね、まぁ、僕は60年以上も生きたからこんなことが言えるのかな、大林君はこれからの人だからな」
大きな声で笑ってた。
ついでにノートパソコンの設定をやらされた昭太郎。
元気なオヤジは娘とメールがしたいらしい・・・。
磯野は最後にこういった。
「お母さんを大切にな、君も大変だけど、それを見ている家族も大変なんだぞ」
「はい・・・」
完敗だった。
不良オヤジの度量を見せつけられた昭太郎は帰り際、なんか反抗心が湧いてきた
「僕もゴールドコーストに行きますよ!」そう宣言した。
(不良でオヤジに負けてたまるか)そんな気持ちは懐かしくもあり、少し心地よかった。
【あの時の僕は人生を楽しんでいなかった。
状況に甘えて今を楽しむことを忘れていた。
どんな状況でも自分を楽しませられないのは自分の責任だ。
このまま元気になれなかったら誰かのせいにするつもりだったのだろうか?
いや、自分を見失っていたのだ。
「悲劇のヒーローになっても仕方ない。動ける時間を大切に使おう」
そう思った。】
★
フッと笑った磯野は呆れ顔で「そんな噂が流れてるのか」と言って続けた。
「ああ、行ってきたよ。いい海だった。綺麗な海だったよ、僕は三重の海の傍で育ったから海が見たくてタクシー飛ばしちゃったよ、1時間ぐらいだったかな」
「倉本さんには言って行ったんですか?」
「言ってないよ、言ったらダメだって怒られちゃうからね」
「なんでですか?」
「100㎞を越えた所はポケベルで呼び出しても、すぐに病院に来れないからだそうだ」
「不良オヤジですね」
磯野は大きく笑ってから話しはじめた。
「僕たちはまだ1ヶ月しか待ってないじゃないか、今だったらまだベルも鳴らないだろうし、鳴ってもそんなに後悔しないだろ」
「それはわからないですけど・・・」
「そんな弱気じゃ、ノイローゼになっちゃうそ、移植を待つってのは尋常じゃない精神力が必要なんだ。いつ来るかわからない手術をどんどん悪くなる体で待つことが大変なことぐらい僕にもわかるよ、でも、だからこそ毎日楽しく過ごすことが必要なんだ。それが僕の生き方だしね、まぁ、僕は60年以上も生きたからこんなことが言えるのかな、大林君はこれからの人だからな」
大きな声で笑ってた。
ついでにノートパソコンの設定をやらされた昭太郎。
元気なオヤジは娘とメールがしたいらしい・・・。
磯野は最後にこういった。
「お母さんを大切にな、君も大変だけど、それを見ている家族も大変なんだぞ」
「はい・・・」
完敗だった。
不良オヤジの度量を見せつけられた昭太郎は帰り際、なんか反抗心が湧いてきた
「僕もゴールドコーストに行きますよ!」そう宣言した。
(不良でオヤジに負けてたまるか)そんな気持ちは懐かしくもあり、少し心地よかった。
【あの時の僕は人生を楽しんでいなかった。
状況に甘えて今を楽しむことを忘れていた。
どんな状況でも自分を楽しませられないのは自分の責任だ。
このまま元気になれなかったら誰かのせいにするつもりだったのだろうか?
いや、自分を見失っていたのだ。
「悲劇のヒーローになっても仕方ない。動ける時間を大切に使おう」
そう思った。】
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