『クルマとタバコとカンコーヒーと…』【リアル物語ケータイ小説版】

 その日の夜、昭太郎は磯野家を訪れた。

「いらっしゃい、よく来たね!」元気な声で歓迎してくれた磯野は60を越えている。

色黒で白髪の風貌はダンディーなオヤジのムードを漂わせていた。

「どうも、おじゃまします」
 こんな普通の会話が懐かしかった。

ひとの家に行くというのはここに来て初めてのことだった。

「楽しくやってるかね」

「そんなに楽しくやってないですよ、我慢の日々ですから」

「ダメだよ、そんなんじゃ、人生一回しかないんだから楽しまないと」

「いや、楽しむためにここに来てるわけじゃなくで、元気に日本に帰りたいので大事にしてるって感じですよ」

「ここに来て安心って訳じゃないだろ、僕たちは明日死んでも不思議じゃない。だから、こんな所まで来てるんじゃないか、違うかい?」穏やかな顔で話す磯野。

「そうですけど・・・」

「だったらここでも楽しまなきゃダメだよ」

「結構身体がキツくて」

「何言ってるんだよ、君はいくつだ?」

「28ですけど・・・」

「僕は63だよ、それもガンだ、肝臓ガン」

「そうですか、身体キツくないですか?」

「そりゃ、キツいよ。でも、人生は一回だし、今は二度と来ない」

「・・・・・そうですね」

「で、今日はどうした?」

「ゴールドコーストに行ってきたって噂は本当なんですか?」