退院した私は、行く場所も無く
とりあえず今日は実家に戻る
事にした。

母の運転する車に、二人きり
見慣れた町並みを走る。

そして明日から、しばらくは
安いホテルに滞在して
母と一緒に、住む場所を
探す事になりそうだ。

私はもう、伊吹や芳野の居る
眠らない街へ戻る事は
考えていなかった。

私は、生まれたこの町の何処か
で、この子とひっそりと暮らす
事にした。

芳野を想えば

涙が流れそう・・・

でも、彼には

彼の人生がある。

「ねえ、ヒイロ
 ママの離婚が成立したら
 お父さんが建てたあの家を
 売り払って、三人で
 新しい場所で生活しない?
 
 考えておいて・・・」