ドアを開けられた瞬間にふわり、甘い香りが鼻をくすぐった。部屋に一歩足を踏み込めば、心臓は弾けんばかりにドクドクと脈打つ。

「なにしてるの!?こっち!」

ソファーに腰掛けようとした僕の腕をグイッと引いて、傍らのベッドのシーツを捲る。

え……?

「早く横になって」

一瞬ためらったものの、具合の悪さと、誘うような甘い香りに負けて、僕は崩れるようにベッドに横たわった。ふわりとシーツを肩まで掛けられれば、優しい香りが僕を包んで、まるでキミに抱き締められているような錯覚に陥る。

「寒くない?」

「ん……ごめん」

むしろ熱いよ。

「お粥食べれる?」

「いらない」

「何か飲む?」

「いらない」

「じゃあ、薬とってくるね」

「待って」

キミの細い腕を掴む。