超鈍感男の松嶋の事だから、これで僕の「爪」を見間違いだと思ってくれるに違いない。

 それよりも、命の灯が消えて行きそうな、女の容態の方が気になった。

 彼女を放って、正体不明の男の後を追うことも出来ない。

 僕は、ただ、むせ返りそうな血溜まりの中で、彼女が寒くないように抱いていてやるしかなかった。

 救急車が来るまで。