男の口が耳まで裂けたかと思うほど、大きく開いた。

「喰っちまったよ! ほとんどな!
 仲間に逢いたきゃ、腹ん中で逢え!
 場所は、いくらだって貸してやらぁ!」

「お前っ……!」

 がきんっ!

 わめき、叫びながら突っ込んで来た男の爪を、僕も右手の爪を出して受けた。

 失血し、意識の無い女を、傷ついた左腕に抱えたままでは人の姿で反撃は不可能だ。

 半分本性を出した姿を、誰かに見られる危険性はあったが、それどころではなかった。

 がんっ! きんっ!

 爪と爪とが打ち鳴らされた、澄んだ高い音が、幾たびか保健室に響きわたる。

 この頃になって、ようやっと、養護教諭以外の人間共達が異変に気がついたようだった。