Holy×Kiss~闇の皇子より愛を込めて~【吸血鬼伝説】

……くっ!

 男の爪が、僕の肩に食い込んだ。

 僕は構わず、女をさらって、横に跳ぶ。

 赤い血がしぶいて、自分の肉片の一部が男に持っていかれる感覚があった。

 痛い。

 左腕を、丸々持っていかれそうな痛みに、意識が白濁しそうだった。

 しかし、僕は着地すると、女を庇い、次の攻撃に備えて身構えた。

 男は、にやりと笑うと、自分の手についた僕の血と肉片とを口に持っていき……食べた。

「ウマいな」

 僕と女の血で口元と胸を赤く染めた男が、目を細める。

「胸クソ悪い吸血鬼共も、喰ってしまえば、人間の何倍もウマい……それが、特に、皇家のヤツならばな……」

 男は、長い舌を出して、自分の口の周りの血を舐めとった。

「キサマは、他の吸血鬼共が、どこに居るか、聞いていたな……教えてやるよ」