まるで。

 僕が、吸血鬼の本性をさらした時に生える、鋭く長い爪だった。

 僕は、爪から腕に伝っていくように、視線を襲撃者自身にずらしていく。

 男だ。

 腕の筋肉が、軽く僕のウエストを超えている。

 元は、Tシャツとジーパンだったらしい。

 しかし、今となっては、ボロ布としか思えないほど汚れきった何かを身にまとっていた。

 そして、髪は。

 どす黒い血のような色で、まるで、ライオンのように逆立っていた。

「何者だ?」

 僕の質問に、男は、ベッドから自分の爪を引き抜くと、凄惨な表情で、笑う。

「華奢なぶんだけ、身軽だな。
ノロかったら、殺してやろうと思ったのに」

 ほざく声に殺気は無い。

 しかし、黒々とした悪意が滲み出ていた。