『……3、2、…!』

 千里が、1、と言った途端。

 がしゃん! と言う、窓ガラスが割れる音と一緒にいくつかの事が、ほとんど同時に起こった。


 ざりりりり!


 防煙加工してある、保健室の丈夫なカーテンが引き裂かれ、人間の二倍はありそうな人影が、飛び込んで来た。

 そいつは、真っ直ぐにやって来たかと思うと、寝ている僕に向かって、鋭い刃を突き刺した。

 ………!

 僕は、かけていた上掛けをはねのけて、バク転の要領で起き上がり、ベッドの頭側に立つ。

 空振りの刃は、今まで僕が寝ていた場所の、胸の辺りに深々と刺さった。

 その、僕を狙った刃の種類を見て、小さく息を呑む。






 ……爪。