『……子! 皇子!「悪意」が来ます! 』

「……千……里?」

 いつの間にか、眠っていたらしい。

 少し横になっているだけのつもりだったのに。

 耳元の、切羽詰まった千里の声で目が覚めた。

「悪意……?」

 殺してやろう、と言う殺気だったら、僕にだって、寝ていてもわかったはずだ。

 遠くに居る魔鏡千里に警告される前に。

 ぼんやりした頭に、突き刺さる声は、更に続く。

『早く起きてください! すごい勢いで近づいて来ます! 距離、8、7、6、5……!』

「……!」

 カウントが、速い。

 人間が全速力で走る速さより、もっと。

 頭より、体の方が早く動いた。