「……確か、鈴木さんは、休憩に出ていらしたのではなかったでしたっけ?」

「……うん」

「何か、出て行った時よりぼろぼろのような……?
 陽にも焼けているような……?」

 ようやく校長に解放されて保健室に帰ると、養護教諭が心配そうに言った。

 うん。


 校長と付き合っていると、遠からず、灰になりそうな気分だ。

 それでも、待っている者がいるならば。

 夜、眠れない者がいるならば。

 人の安眠を守るのが、僕の仕事だから。

 大丈夫、と手を振って席に着くと、見かねた彼女に止められた。


「昨日の今日ですから、もう止めた方が。
 見ているこちらの方が、心配で……」

 こういう好意をむげに断ると、万が一また、倒れでもしたら、今後、仕事をさせてもらえなさそうだ。

 確か、彼女は、医師だって言ってたし。

「すまない。では三十分ほど時間くれ」


 僕が折れると、彼女は微笑んだ。

 保健の先生らしく、優しく。

「では、三十分間は、誰も入れません。
ごゆっくり、休んで下さいね?」

「ありがとう」

 正直……この心使いは、本当にありがたかった。