「お前の人間としてのプライド。
 そして『命』だよ。

 僕に独占的に愛される人間は、大幅に寿命を縮めることになる。

 しかも、僕は、お前にとって屈辱的な事を要求するよ?

 容赦なく……何度も、何度も」

「かまわないわ!
 わたしを愛して!
 わたしだけを愛して!」

 篠田の涙混じりの叫び声に、僕は、そっと目を伏せた。

「わかった……それでもいいなら、愛してあげる。
 ……快楽の海に沈んで、もっともっと、僕のことしか考えられなくしてあげる」

「鈴木……先……」

「愛を語るのに、その呼び名はふさわしく無いな……真也、でいいよ。
 名前を呼び捨てて構わない」

 偽りの名前で、偽りの愛を語る。

 それは、僕には慣れた、いつものこと。

「真也……」

 篠田は、まつげに涙を止めたまま、嬉しそうに笑った。

「ああ。
 では、おいで……?
 ここを出て、どこか静かな場所に行こうか」

 お前の命が、終わる場所へ。

「はい!」

 僕が、ゆっくりと身を起こすと、篠田は、僕の懐に飛び込んで来た。

 まるで、自分の居場所を見つけた小鳥のように。