「……ん……」

 どのくらい時間がたったのだろう。

 柔らかい、唇の感覚で、目が覚めた。

「……篠田?」

 おずおずとした、ぎこちない口付けに、目を開けると、目の前に篠田がいた。

 保健室は、斜光カーテンである程度暗くなってはいたが、まだ、陽は陰っていない。

「どうした?」

「……どうしても、鈴木先生と二人きりで会いたくなって……来ちゃった」

「一人か?
 そこに、保健の先生は、居なかったか?」


「……保健の先生は……さっきクラスでけが人が出たから、その助けに行ったのよ」

「ふうん……偶然、先生が席を外してくれて、良かったな」

 養護教諭は、まるで、子犬のように、ずっと僕の側についていたから。

 ちょっとやそっとでは、どかなかっただろうに。

 僕の言葉に、篠田は、目を伏せた。

「……! 
 もしかして、偶然ではないのか?」