もちろん、超鈍感男の松嶋はそんな事、ちっとも気にしていないようだった。

 ヤツは、僕のため息も凛花の視線も気がつかない。

 眉間に深々としわを寄せて、僕を睨んだだけだった。

「何だ。あんた。ウチの生徒と知り合いだったのか?」

「昨日、篠田さん自身の依頼で、カウンセリングをしたんだ」

 ……他にも、色々したような気もするけれど。

 そんな、心の声を見透かそうとするように、松嶋はさらに、ぎゅうと眉根を寄せた。

 しかし。

 鈍感男にバレるような表情は、あいにく僕は持ち合わせていない。

 ただ、ヤツは僕自身が気に入らないようだった。

 不機嫌な顔のまま僕に張り付いた篠田を引き剥がし、大槻をフツーに追い出しながら「授業だ! 帰れ!」と騒ぐと、今度はようやく保健室の外へ出て行った。