魅了が効かない以上、凛花は僕の捕食の対象から外れている。

 食物にならない人間の好みなど、本来どうでもいいハズだったのに。

 松嶋を見つめる凛花を見て、ふと、心に何かがよぎる。




 ウラヤマシイ





 ……え?


 思わぬ心の告白に、自分自身が驚いた。

 傍らを見れば、潤んだ瞳の篠田が僕の左腕を抱いている。
 篠田は、僕を誰のイメージと重ねているのだろう。


 真に愛されているわけではなくても、食事の確保はできている。

 だから、凛花の事など、本当にどうでもいい事のはずだったのに。


 無意識に無差別にかけてしまう、僕の魅了の魔法無しに、相手の心を掴んだ松嶋が羨ましく思えたのか。



 それとも……?




 いや。




 人が真に僕を愛する事が無いように、僕が、人間を愛する事も無い。




 僕は、女を抱いて、噛みついて、食うだけだ。




 僕は、そっとため息をついた。