「は……ぁ……ふ…」

 長い口付けから解放してやると、篠田は、とろんとした目で僕を見た。

 つ……と糸を引いた唾液が、切れてきらりと光る。

「こんな……大人のキス……初めて……」

「そう?」

 僕は、篠田の肩を抱いて、囁いた。

 凛花が帰ったあと、僕たちは、席を替えて奥の談話室に入った。

 会員制で、個室になっているこの談話室で、僕は仕事をし、時々食事もとる。

 ちょっとやそっとでは、声が漏れないところが気に入っていた。

 見た目は、普通の喫茶室なのに。