僕は、日暮れの街を、人の流れに逆らって歩く。

 買い物帰りの母親。

 遊び疲れた子供達。

 早めに仕事を切り上げたらしい、父親。

 彼ら全てに帰るべき家があり、待っている家族がいるのだろう。

 少し、うらやましい……とちらりと思って首を振る。

 人間は、本当に、間抜けな生き物だ。

 なるべく、人に混じって目立つな、と言う爺の教えどおり、平均的な住宅街にばかり屋敷の出入り口を開けていた。

 見た目は、狭いワンルーム暮らしに見える僕に、近所の人間が、気を使う。

 闇の生き物に。

 僕は、お前たちの捕食者なのに。

 熱々のスープなんて、持って来た奴もいた。