「醜い化け物でも、泣くのか」

 声に顔を上げると、穣が……大槻刑事がいた。

 エンキの粘液や、泥や、いろんなもので汚れ、ひどい有様ではあるものの。

 特に怪我はなさそうだ。

 地下で見つけた、一応人間に見える関係者数人に、手錠や縄をかける作業が終わったらしい。

 刑事仲間の元に戻るつもりのようだった。

 凛花を促して、行くついでに、僕に声をかけたのだ。

 大槻刑事の言葉に、刺を見つけて、僕は、涙の残りを自分で傷つけた拳で拭いた。

「僕を……醜い化け物だと言うのか?
 人間」

 そして、そのまま彼を睨む。

「僕は確かに、女を犯して喰う。
 ……生きるために。
 そうやって、何百年も、無意味かもしれない、無駄かもしれない、歳月を過ごしてきた。
 僕は、確かに、化け物だ……しかし……」

 睨む。

「お前達は『ナニ』だと言うのだ?
 立場の弱い少女に、自らの快楽のために屈辱を与え。
 怪物を造っては、命をもてあそぶお前達は、一体。
 『ナニ』だと言うのだ、人間!
 お前達こそ!!」



 ……化け物じゃないか!!!



 激情のままに紡いだ最後の言葉は、それでも。

 口に出して言えなかった。




 なぜなら。





 僕の愛しい凛花もまた。





 ……人間だったから。