「……鈴木先生……!」

 優しく暖かい手が、僕の手を包み込んで、ようやく。

 僕は、木の幹に手を叩きつける事を止めた。



「……凛……花……」


 見れば、凛花が今にも泣き出しそうな顔で、僕の右腕を抱きしめている。

「……先生……」

「……うん……」

 凛花は、何も言わなかったけれど。

 色々、判ってくれているようで。

 ……涙が出てきそうになった。

 放っておくと、あとから、あとから溢れてきそうだった。

 凛花は、黙って、僕の頭を抱いて。

 人間の姿の時と同じ位に短くなってしまった、僕の髪を撫でてくれた。



 僕は。

 ……僕は……

 …………不覚にも……





 凛花の優しい腕の中で。





 声を殺して、少しだけ。




 ………泣いた。